自分が東京の女子大に通っていたころを懐かしく思い出しながら、ゆっくり読みました。
この本は、私にとっては、親など周囲から価値観を植え付けられ、進路を制限されてきた人たちの物語。18歳で東京に出て来て、そういう人にたくさん出会った。
当時本当に不思議だったのは、社会の中で自分はこういう立場で、これからの人生はこういう風に生きていくと規定されている、と思っているようであること。そしてあなたたちの大学は結婚相手として…!!!(言葉は違うけどこんなことを面と向かって言われたときは、このひと大丈夫かな、って思った)
素直にずっとその道を進んでいる人と、敷かれたレールから離れた人を知っている。その道を進んでいる人は、子どものころからたくさんの時間をかけて、たいへんな努力をしている。脇見する余裕がないくらいに。その人の親世代もそうしてきた。先祖代々、自由に外の世界を見聞きする機会を与えられなかった、とは言い過ぎだろうか。
しかも彼らは社会のマイノリティ。この本のレビューやツイッター投稿をながめていると、多数派の反応が、読んでいてつらい。これだから、マイノリティは集まらないと。
以下は思い浮かんだこと。
- 社会の上層にいる親から生まれた人は人生ハードモードになりがちなのかと思う。学生のときにもそう思ってた。
- 親の期待という名前の呪いが子を呪縛する。
- 社会の階層が違う人が交わるのはいいこと。若い人は特にいい。
- お話の中の親の様子が、読んでいてつらい。リアルのお友達と重なる。
- タイトルはこうなっていて、読み進めるときに忘れちゃいそうだが、美咲さんはずっと成績が良かった。これを読んで「こんなに成績憂愁なのに『頭が悪い』扱いされるとは!」と憤怒する人もいるかもしれないが、東大のなかでも浪人してた人は一段下に見られていたように思う。
- 東大に通う庶民と、女性は、大変なのかもなあといまさら思った。当時は何も思わなかったけど。
- 検見川はいいところ。
- この本のレビューで、東大生にこれを読ませて改心させようみたいな感じのものが多くみられたのが、一方的な押し付けでとても気持ち悪い。でもそんな意見を素直に表すこと自体は、お互い理解し合うためにいい。(私はずるいからあまりしない)
この本の内容と関係ないかもしれないけれど、読んだ後の自分の変化。
私は以前からずっと、そのうち戦争が始まって、自分の子のところに召集令状が来たときのことを心配している。きっと自分は周りに流されて「お国のために」って言うのだろう。どうしたら避けられるのかずっと考えて、自分ではどうしようもないという結論に達して、子どもに頼むことにした。
「お母さんはおかしくなっちゃって、目の色が変わって『お国のために死んできなさい』と言うよ、そうしたら、言うことを無視して逃げるんだよ」と地震の避難訓練よりもしつこく、子どもに言い聞かせている。
この本を読んで、よりしっかりと、頼もうと思いました。